paradigm design lab

日々の暮らしの中からふと浮かんだ思考を集めています。

最近読んだ本


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 あらかじめ断っておくと、このノートは、大阪市内のわりと香ばしい地域の、カフェを目指している系の喫茶店で書かれている。オシャレ感を醸し出せる可能性はほぼゼロに近いと考えていただきたい。しかも持病が出て、慌てて薬(エチゾラム=所謂デパスジェネリック薬)をキメて、薬が効いてくるまでの時間に気を紛らわす為に、発作的に記している事をご容赦いただきたい。

 さて、内容は考えられる状態ではないので、サクッと最近購入した書籍を紹介したい。

 まずジル・ドゥルーズの「ニーチェと哲学」。これはドゥルーズの処女作「経験論と主体性」を読了して調子にのって購入した、ドゥルーズの2作目の作品だ。ドゥルーズのどこが凄いかと言うと「解釈力の高さ」だ。ドゥルーズ曰く「解釈は哲学における最高の技術」であり、その言葉を実践するように初期ドゥルーズはヒューム、ニーチェ、カント等のテクストを、神経症のように多角的かつ綿密に独自の解釈を加えて分析をしている。
 
 内容については挑戦中なので流すが、ニーチェを「意味と価値」を形而上学に付与した、力動への意志に基づいた反弁証法主義者として捉えている。ニーチェさんに言わせると「矛盾?貧弱!弁証法?くだらぬ!力こそパワー!」ってことだ。

 次は岩田卓司さんの「贈与の哲学ージャン=リュック・マリオンの思想」だ。これは岩田教授が中沢新一氏との講演会で語った、フランスで存命の現象学者ジャン=リュック・マリオンの哲学をテーマとした講義録の形をとっている。

 マリオンはジャック・デリダの弟子であり、フッサールハイデガーといった現象学者を学びながら省察を深めて、キリスト教神学を背景とした「根源的与え=根源的贈与」という独自の現象学的還元による結論を導き出している。この「我々は、この世界に、根源的に与えられてしまっている。」というエポケーの極みには、キリスト教神学の神の恩寵を通奏低音としながら、生の偶有性なども副旋律として奏で、私の見立てでは巷で流行りの(といってもネタ切れ気味な「現代思想」や「ユリイカ」界隈に限定されるが)、反出生主義にも根本的反駁を加えるポテンシャルを持っていると考えている。個人的にはマリオンの主著「贈与と還元(ヤフオクで10000円、版元絶版)」を何とか入手して読み込みたいと思っている。といったところだ。

 その次は角川ソフィア文庫から出版されている「仏教の思想(全12冊合本版)」だ。私の東洋哲学面での関心は、今年亡くなられた故梅原猛氏の梅原日本学にあり、晩年の梅原猛氏と東浩紀氏の対談集「草木の生起する国」を読み、そのあとがきで東浩紀氏がこの本を仏教研究に役立つ本なので読者に是非読んでいただきたいと推薦されていたからポチッと購入したのだ。

 この本には梅原猛氏が8本の論文を寄稿しており、その論考は、現役の仏教者でもぐうの音も出ない程の完璧な理論読解に基づいた、仏教東洋哲学の研究にとって非常に重要な内容となっている。中でも天台仏教や日蓮の解釈は、精密であり大胆で、最も肝心なエッセンスを丁寧に解説しており、私も舌を巻くというか、ただため息が出るほどのロマンシチズムに圧倒された、素晴らしい内容だった。この本は思想のプロでも下敷きにできるほどの内容であるので、一度読んでしまうとTwitter界隈の仏教論が浅く感じてしまうに違いないだろう。

 最後に、ミシェル・フーコーのコレージュ・ド・フランスでの講義集、このブログのヘッダーにも使っている「主体の解釈学」について触れる。この本は後期フーコーの重要な概念「霊性」についての解説がみどころだ。

 「霊性=主体が真理に到達するために必要な変形を自身に加えるような探求、実践、経験。主体の全存在にかかわるもの、その存在そのものの変容や育成を目指すような訓練の総体のことである。」

 この霊性の概念は、日本で言う徳のような、実存自体を作り替える精神修養の必要性とも捉えられる。人間性全般を高める、孤独かつ孤高な精神修養。哲学を学ぶ上でも、最終的に問われるのはその実践なのだ、と暗に伝えているとも思われる。

 またそれ以外にも、自己への配慮(エピメレイア・ヘアウトゥー)という概念を紹介していたりもする。

要約すると、
1)振る舞いや見方、他者への態度
2)視線を外部、他者、世界から「自己」へ向け変える事。
3)自己を変え、自己を浄化し、変容する訓練(省察の技術、過去を記憶する為の技術、良心の吟味の技術、表象の検証の技術)
といった感じである。

 このエピメレイア・ヘアウトゥー=自己への配慮の思想は、「汝自身を知れ」ほど有名ではないが、「汝自身を知れ」と同様に、1000年に渡り西洋の道徳の基礎となってきたとの事。フーコー程になると1000年の単位でヨーロッパに通底する思想を語ることができるのだなと、ただただ感嘆する。こちらもまだ挑戦中なのだが非常にエキサイティングな内容だ。

 以上、ここ2ヶ月程の期間で購入した本の中から、印象に残っているものを紹介した。私の主観だらけな説明でこれらの本の魅力が伝わったかどうかは自信がないが、気になった方は一度手にとっていただきたい。損はしないことは請け合いだ。

 では、また、ふらっと思い立つその日まで。

 

 

DAIGO MATSUMO